【制作の小話】アナログとデジタルの融合を目指して

こんにちは、イラストレーターの林鮎香です。

先日、とても嬉しいニュースがありました。
私の地元である、広島県福山市の夏のイベント・福山夏まつりのポスターに、
イラスト「伝えよう!福山夏祭り」を採用していただくことになりました。
関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。

この作品は、まず手描きで制作を進め、最後にデジタルで仕上げを行っています。
手描きの温かさと、デジタルの印刷映えの両方を生かしたいと試みた作品でもあります。

今回は、「伝えよう!福山夏祭り」の制作過程のご紹介と、
後半で「アナログとデジタルについて想うこと」を書かせていただきます。


【制作過程1】資料集め・ラフスケッチ

まず、資料を集めつつ、どんな構図にするかラフスケッチを行います。
この段階では資料集めに出かけることが多く、
福山城周辺を歩いたり、図書館で浴衣やお城の本を借りたり、youtubeで二上がりおどりの動画を見たりしました。

インターネット上でも資料が整いやすい時代ではありますが、
リアリティや著作権などの問題もありますので、できる限り一次情報を収集するようにしています。

当初は、福山市の俯瞰図、花火を眺める案、ハチマキを締める案などがありました。

また、編笠を被ると、制服やマスクのように匿名性が出ることが面白く感じました。
あえて表情を描かない方が趣がでると感じ、子供も顔を隠す方向で構図を練ります。
福山らしいモチーフ(福山城やバラなど)を配置していき、最終案へたどり着きました。

今回は自主制作ということもあり、かなりラフなラフ(笑)です。
ご依頼の場合は、完成を想像できる状態のものを3案(簡単に色付けもします)ご提案させていただいています。
資料集めたり、酷似した作品がないか調べたりしながら、ラフご提案までに1~2週間ほどお時間をいただくことが多いです。

【制作過程2】骨描き

水彩紙に鉛筆で下描きを行った後、骨描きを行います。

骨描き(こつがき)とは、「彩色の前に、墨で輪郭線を引く技法」です。

主に日本画制作で行われる技法ですが、気合が入るので、アクリル絵の具でも行うことが多いです。

この時点で美しいと感じるかどうか、制作をこのまま続けて問題ないかの指標にしています。

福山城は描きだすと止まらなくなり、この時点で完成形に近いほど描き込みました。

【制作過程3】花火を描く

花火はあまり描きこまずにサッと仕上げたいモチーフの一つ。

まず花火の下塗りを行います。

マスキング液で花火を描いた後、濃い空の色を塗っています。

マスキング液を剥がすと、そこだけ色が塗られていない状態になります。

マスキング液は久しぶりだったので、画材店の店員さんに相談して、シュミンケのマスキングインク(筆とセットのもの)を使用。
店員さん、ありがとうございました!

【制作過程4】彩色

全体の調和を見ながら、それぞれのモチーフを描きこんでいきます。

描き込みが進み、トーンが暗くなってきました。

アナログ作品であれば、そのまま描きこんで完成となりますが、今回はデジタル作品として仕上げたいので、スマホで撮影後デジタルへ。

【制作過程5】photoshopで描き込み

今回使用したソフトはphotoshopです。
撮影した作品の色味を調整した後、主にブラシを使って描きこんでいます。

描き込みの感覚はアナログとさほど変わりませんが、修正しやすいのはデジタルの利点です。

浴衣の模様や群衆・灯籠はデジタルで改めて描きなおしました。
一方、花火や提灯・福山城は多少手を付けた程度で、手描きを生かしています。

印刷すると印象が変わってしまうことも良くあるため、完成まで何度も印刷で確認し、完成。


アナログとデジタルについて想うこと

ここからは、独り言のような小話を一つさせて下さい。

デジタルイラストは、昨今かなり主流となっていますね。
しかし、学生時代日本画を描いていた私にとって、デジタルイラストを始めた時は少なからず抵抗がありました。

デジタルは正確な円や直線が一瞬で描けますが、それだけでは感情の入る隙がないように感じます。
しかし、手描きの微妙な味わいは、データにしてしまうと、その良さが失われることも。
一方、デジタルは印刷映えしやすく、完成後も修正しやすい利点があります。

今回制作した「伝えよう!福山夏祭り」は、そんなアナログ・デジタル両方の良さを生かそうと、挑戦した1枚です。

また、資料を集める中で、地元でありながら福山市の知らないこともたくさんあると実感しました。
イラストを通じて、福山市をはじめとする日本独自の文化継承、益々の発展の一助となれるよう、一層励んでいきたいと思います。

今後も、人の感情が入る隙のある「懐の深いイラスト」を目指し、これからもアナログとデジタルのいい塩梅を探していきたいと思います。


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